手始めに。



「んー」

飛鳥は波に揺られながら、目映い光を降り注ぐ太陽を仰いで大きく腕を伸ばした。


最高だなぁ。


雲が一つも無い。


快晴。


絶好のレジャー日和。


肌を焦がすような陽射しでさえとても心地がいい。
余りの気持ちよさに彼が目を瞑ったその瞬間である。


「飛鳥」


突然背後で大きな水しぶきが上がり彼の体が逞しい胸にすっぽりと包まれる。
振り返ることも出来ないぐらいの強い力で押さえ込まれて、相変わらず強引な愛情表現にや
や呆れたように飛鳥がそっとため息を漏らした。
「お前、さっきからずっとそのまんまじゃないか。泳がないのか?」
「知ってる癖に・・・意地悪ですね」
軽く睨まれた『彼』が返すのは屈託の無い笑顔である。少し焼けた肌に映える白い歯が爽や
かさを満面に押し出していた。
「しかし、知らなかったなぁ。お前が」


泳げないなんて。


という言葉がくぐもっていたのは、慌てた飛鳥が両手を伸ばして綾人の口を塞いだから。
「それは言わないでって、前からお願いしてるじゃないですかっ!」
「あははは。ごめんごめん」
悪気は無いということは重々承知の上だったし、他に誰も聞いていないという事も分かっては
いたものの言葉にされるととても恥ずかしくて。
飛鳥は水色の浮き輪をがっちりと握ったまま、ぷうと頬を膨らませた。
「そう怒る事はないだろう。なんだったら俺が泳ぎ教えてやろうか?」
良い子、良い子、と綾人が頭を撫でるとその彼は今度は子供扱いされたことに対して更にむく
れた。
「け・っ・こ・う・で・すっっっ!!」
くるりと背中を向け、手足をバタつかせて綾人の傍から離れようと試みるもなかなか前に進ま
ない飛鳥。
情けなくて、悔しくて。半べそをかきだした負けず嫌いな彼を再び綾人が優しく抱き締める。
「ほら・・・分かったから。あんまり暴れるなよ」
「!」
顎を掴まれ、濡れている瞳を覗き込まれて、飛鳥の脈はどんどん早くなっていく。


「泣くなって。とりあえず、さ」


「んっ・・・」


切なくなるぐらい熱い、綾人の唇がそっと飛鳥のものに触れる。


「人工呼吸から・・・教えてやるよ」


それが、始まりの合図。


徐々に勢いづいてゆく呼吸すら奪われてしまう激しい口づけに初めは抵抗していた飛鳥もや
がてうっとりと瞳を閉じると、しっとりと濡れた黒い髪に腕を巻きつけたどたどしく応えてみせ
た。



<補足>

人工呼吸じゃないじゃんっ!って突っ込みは無しにしてやって下さい。
設定は日中。誰もいない海。(親不知・・・かな?)
飛鳥がもしカナヅチだったら・・・と勝手な妄想で書いたお話。
浮き輪、似合いそー。
そして何やらもにょもにょ始めそうなところでおしまい。
中途半端でごめんなさい。

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