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「はい、啓太」
「ありがとう」
暑い日差しが容赦なく照りつけるアスファルトの上を歩きながら、和希が啓太に先程買ったそ
れを手渡した。
「ストロベリーとマンゴーのダブルって、すごい組み合わせだな」
「いいだろ、両方好きなんだから。そういう和希は何頼んだの?」
一口頂戴、と啓太が自分のスプーンを和希の持っていたアイスに突き刺してすくい取る。
口に運ぶと爽やかな酸っぱさと冷たさが一杯に広がって、思わず目を閉じた。
「つめたーっ!あ、これパイナップル?」
「うん。季節限定だっていうからさ」
「旨いね。俺もそれにすれば良かったかな」
啓太が羨ましそうに呟くのを見た和希は声を上げて笑った。
「何だよ」
「いやそういうところ、小さい頃から変わってないなーって思ってさ」
言いながら和希が自分も、とスプーンを啓太のアイスに差そうとすると「だめ」と拒否される。
「いいじゃん一口ぐらい」
なおも食い下がろうとする彼に啓太が背を向ける。子供扱いされたから機嫌を損ねたのかな、
と諦めた和希が早くも少し溶けかけている自分のアイスにかぶりついた。
そして、クーラーの効いた室内より、太陽の下で汗を拭きながら食べるアイスの味はまた格別
だな、と実感する。
「・・・かーずきっ」
楽しそうな、笑いを噛み殺したような声が背後から響いて。
「ん?」
コーンをバリ、とかじりながらその方向へ目を向けると、怒っていると思っていた啓太が自分に
向かって、てんこ盛り状態に2種類のアイスを乗せたスプーンを差し出した。
「あーん、は?」
「・・・」
「あーんだよ、和希」
多分和希に対する彼なりの仕返しなのだろうが、どうしてこうも可愛らしいのだろうか。
そんな事をしたところで和希にとってみたら恥ずかしいどころか、逆に周りの通行人に声を大
にして「みんなー!可愛いでしょう!彼は俺の恋人なんですよーっ!」と叫びたい位である。
「ね。恥ずかしいだろ?だからもう俺のこと子供扱いすんのやめてくれよな」
「あーん」
勝ち誇った笑顔を浮かべていた啓太の目が、まんまるく見開かれた。
「いただきます・・・うん。マンゴーも旨いね、なかなか」
動けない啓太の腕を掴む和希が半ば強引にスプーンを自分の口へと運ぶ。
それを一口で飲み込むと彼はにっこりと笑い、あの腰に響くような甘い声で囁いた。
「じゃあ、今度は俺が」
・・・藪蛇。
「いいっ!俺、もうお腹一杯だからっ!」
「遠慮しないで、ほら。さっき俺のアイス欲しいっていってたじゃん」
「もうっ、もう一口貰ったからいいってばっ・・・恥ずかしいから・・・やだっ・・・」
「ふーん、俺にはその恥ずかしい事させた癖に?啓太ってそんなに意地が悪かったんだ・・・」
優しさ溢れていたものから一転させ、狡賢そうな瞳で和希が啓太を見つめる。
「ち・・・ちがっ・・・」
「・・・じゃ、食べてくれる?はい、あーん」
・・・しかた・・・ないよ・・な。あんな一言でカッとなった俺が大人気なかったんだし。
啓太は心を決め、きつく目を瞑ると小さく口を開けて「あーん」した。
再び、冷たく心地良い甘酸っぱさが口腔内に広がってゆく。と共に、唇を何かに塞がれる。
「んっ?」
びっくりして目を開けるとそこにあったのはドアップになった和希の顔で。
「!!!!!」
エクスクラメーションマークを脳内いっぱいに飛び散らせた啓太は何とかその腕から逃げだそ
うともがく。
「アイスも良いけど、啓太の味見もしたいなー、俺」
「ば、ばかっ!ここ天下の往来だぞ、何考えてんだっ!」
「残念だけど、俺は啓太の為なら恥ずかしい事なんて何ひとつないからね。さっきのだって恥
ずかしいどころか嬉しくてたまんなかったよ」
「嘘っ」
「嘘じゃないよ」
和希がにやりと笑い自分のアイスを全て平らげると、もう溶けかけて今にも手に垂れそうな啓
太のアイスを取り上げてそれも一気に食べてしまった。
「あっ、俺の・・・」
「さっきお腹一杯って言ってなかった?」
だからそれは断る口実で、とはとても云えない啓太は頬をふくらませるのが精一杯。
「そんなに好きだったら又買ってやるから。外暑いし、今日はもう学園に帰ろうぜ?な?」
「・・・帰って・・・どうすんだよ」
「ん?ここで言っていい訳?」
悔しいから。
いえるものならいってみろと一度は言ってみたい啓太だったが、この自分本位な理事長様は
多分、いや、ほぼ100パーセントに近い確率でその言葉を口にするだろう。
それは何が何でも避けねばならない。
「・・・味見・・・ね」
味見だけで終われば良いけれど。
骨まで平らげられそうだと深い息を吐き出した彼の手に和希が自分の手を重ね、二人はバス
停へと歩き出した。
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そんな彼らの様子を見ていたBL学園生徒二人。
「遠藤は相変わらずだな・・・啓太はあんな奴が恋人で本当に大丈夫なのか?心配だ」
道路を隔てて向かいのオープンカフェから西園寺がティーカップの縁を指先で拭きつつ呟く。
「まぁ、人には色々な愛の形がありますしね。遠藤くんの場合は、少々オープン過ぎるところも
ありますから優しい彼は気苦労が絶えないでしょうね」
ウエイトレスにコーヒーのお代わりを頼んだ七条がその顔に穏やかな笑みを浮かべる。
「あ、でも伊藤くんも負けてませんよ、ほら」
彼が指差した方向を西園寺が見てみると。丁度、隙あらばと抱きつく和希を啓太が肘鉄で吹
っ飛ばすところだった。
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